猫と髭と冬の綿毛と


式が滞り無く行われる中、"彼氏"を演じた人も参加していたが、此方の装いとは天と地ほどの差があり、思わず苦笑いを浮かべる。

友人は隣に若い伴侶を連れ、周りを関係者と彼女が囲んでいた。
ファインダーの中から覗いた幸せな世界に一つだけ思い付き、脳裏で金額を弾き始める。

けれど、肝心なことが分からず、直接的には無理だ、と手薬煉を引いていると、日比谷が此方へ向かって来た。

「写真だろ、ちゃんと撮ってるよ、持ってきたフィムルも無くなった」

先手を打ったことで機嫌は良さそうだが、友人が止まるはずもなく、此方のカメラを手にしながら問い掛けてきた。

「仲直り出来たのか」

「さぁ、どうだかな」

何気なく交わしたまま、互いに彼女へ焦点を合わせる。

「ちゃんと見ろよ、めちゃくちゃご機嫌じゃねぇか」

友人の呆れた口振りを素直に聞き入れられたのは、目の前を見てるせいかもしれない。

彼女が仲間に囲まれながら、幸せそうに笑っていた。

それは、とても楽しそうで、どこから見ても和やかな空気が漂い、彼と戯れることさえ優しげな風に纏われたように感じる。

そんな景色を眺める間に思い付いたことを取り出し、友人が軽く姿勢を正したところを目掛けて投げて見た。

「なぁ、あいつの指のサイズ知らね?」

すると、友人は此方を真顔で見つめてから、すぐに満面の笑みを繕い、憎たらしい表情で応える。

「指輪、お前が、あいつに……」などと言いながらも肩を震わせ、今にも大笑いしそうな様子で、落ちそうなカメラを奪って急かした。

「いいから、早く教えろよ」