猫と髭と冬の綿毛と


搭乗口から出ると、既に彼女が待っていた。
その姿を見ただけで、胸が騒ぎ始める。
ゆっくりと目の前まで近付き、徐に吐き出す。


「ハグしていい?」

「いいよ」


静かに手を伸ばして、軽く抱き寄せ、隙間を埋めてゆく。
まるで、壊れ物を扱うように、神経を研ぎ澄ませ、指先で感触を確かめる。

柔らかな身体の温もりと、髪の香りを、深く吸い込み、僅かな変化に気付いた。

飴の甘い匂いがないのはともかく、やはり、痩せてる。

「会いたかった……」

「うん……」

声にも張りがないように聞こえた。

「少し、痩せた?」

「ううん、変わらないよ。お髭さんが大きくなっただけだよ……」

茶化された様子を思わず鼻で扱い、優しく身体を離しながら、胸の内に残した言葉を取り出す。


「色々悪かった……、電話のこととか、撮影のことも……」

「いいよ、行こ」