猫と髭と冬の綿毛と


拠点に戻るなり、婦人に適当な紐を貰ってから、赴くままに部屋に向かうと、直ぐにカメラへ取り付けて一息吐く。

ふと、休暇を出そうか、と思い付いたところで携帯が鳴り、表示の名前に、今頃かよ、と不貞腐れながらも耳に当て、どうにか吐き出す。

「なんだよ」

「相変わらず柄悪いな、お前」

それは、日比谷にも伝わったようで、嫌味で返されたが、構わずに被せる。

「うるせぇよ、何か用事?」

「まぁ、大した用事じゃねぇんだけどさ……」

電話の向こうは、やけに静かで、低い声が響いて聞こえた。

「なに、早く言えよ」

「俺、結婚するんだ」

「そりゃ、おめでとうございました。ていうか、何度目だよ」

「まだ二回目だ」

「まだ」

一頻(ひとしき)り茶化し合い、同時の深い息を鼻で扱う。

「で?それと俺と何が関係あんの?」

「写真撮って貰いたいんだ、お前に」

不意の依頼に、むず痒くなり、思わず首元を掻く。