先程までは確かに見ていた寝顔が、目を開けると、真っ白な枕に変わっていた。
そこから、窓の外へ視線を向けると、同じような色の空が広がり、朝を迎えたことを、漸く受け入れる。
傍らでは点けたままにされたテレビのワイドショーから、彼が結婚した、と言う速報が聞こえていた。
けれど、相手は彼女ではなく、一般の人。
呆然と画面を眺めながら、昨夜の出来事を何となく理解し始める。
彼女にとって自分は丁度良い当て馬だった。
彼氏に振られて、近くに居た男で寂しさを紛らわせただけ。
それで良かったのか、これで納得するしかないのか……。
思い浮かぶ後悔は拭っても消えない汚れのように染み付いた。
海外に戻ってから、気付かぬ間に一ヶ月が過ぎてた。
帰りの空港に彼女の姿はなく、音沙汰もない。
履歴や電話帳には、未だに名前や番号が残され、決心も付かずに居る。
仕事も相変わらずで、此方の女優には彼女よりも振り回され、不意の休日や三日間の徹夜などはともかく、現地の関係者に酒を付き合わされ、朝まで呑んで過ごすことが多くなった。
仕事と酒と様々な人々に音楽、賑やかな街には何度もパトカーが走り、日本とは違う喧騒に溢れて、毎日が刺激的ではある。
どこを歩いても似合いの服で装う人々が行き交い、髪の毛も様々で肌の色も溶け込み、年齢など全く関係ない。
体型や背の高さも、何もかもが存在出来る風景が繰り返された。
そんな景色を眺めながら、ふとしたときに物足りなさを感じてしまう自分が居る。
その原因を取り出す度に、手を掛けたまま、ただ、過ぎ行く時間に身を委ねた。



