四日目の不意な休日。
木崎からの電話が気になり、すぐに脳裏を廻らせた。
会話を辿れば不審な点は少ないが、様子を思い返すと、慌てたような節がある。
それらを重ねると、おそらく、ただ事ではない気がした。
まさか、彼氏と逃げたか、それとも、などと不吉な想像をして掻き消す。
考えを耽るほどに、浮かぶのは一つしかなく、目星を付けたのは、動物園だった。
勘違いでなければ、昨日のことから、尾を引いてるのかもしれない。
けれど、車は売却済みで足がなく、友人を頼りに連絡をしたが、単調な声の報せに当てを失う。
思い付くままに部屋を脱け出し、携帯から付近のレンタカー業者を割り出す。
乗り慣れない車を運転するのは苦手だが、文句は付けられない。
ミラーの位置を確認し、サイドブレーキを落として発進させ、車を走らせて行く。
(ビンゴ)
駐車場の空きを探しながら入り口を見ると、園内へ向かい始めた二人を捉えた。
どちらからともなく、自然に手を絡めて寄り添う姿を眺める。
彼は大きなマスクとサングラスで顔を隠し、彼女のほうはフードで顔は見えないが、二人とも周りに溶け込むように、前へと進んで行く。
それは、週刊誌で目にするような変装に近い服装で、出会った頃ならば、おそらく、見過ごして、勘違いで良かった、と帰るところだった。
撮影に飽きて息抜きに動物園、などとは木崎も考えには及ばない。
何をしてるのか、と呆れた一方で、探偵のように見張る自分も一緒だろ、と鼻で扱う。
長い一日になりそうだ、と煙草に火を点け、口にしながらシートを倒した。
ここに来るのは何度目になるのか、初めて待ち合わせた日の思い出が巡り始める。
懐かしさに浸る間もなく、眠りに誘われるまま、身を委ねてゆく。
ふと、目覚めた時には、辺りの景色が暖色に染められ、瞬きをしながら、状態を見回すと、消えた煙草の灰が胸元に落ちていた。
座席を確認したあと、位置を戻して再び捉える。
出て来る頃合か、と待ち構えたが、肩透かしを食らい、漸く目にした表示は二十分を越えていた。



