六月の月に愛を誓う。

「え!?いや…」


私、何か沙耶ちゃんに気に入られるようなこと言ったっけ…?


「美緒先輩は私のことたくさん褒めてくれたの。うちって昔から両親は厳しいし、友達もあんなんで普段褒めてくれる人なんていなかったから、嬉しくて。今は律希より美緒先輩の方が好きになっちゃった」


「きゃー」と頬を赤くしている沙耶ちゃんはまるで恋する乙女のようで「ええ!?」と思わず驚いて大声を上げてしまう。


「はあ?先輩、何してんの。天然タラシにも程があるでしょ」

「え!?」

「てことで、今は律希のライバルになったからねー」

「勘弁しろよー…」


じとーと恨めしそうに見てくる律希から視線を逸らしながら、苦笑いを返す。

沙耶ちゃんが律希に対してもうこれと言ったアプローチをするつもりはないようで安心したなんて、律希には言えない。


「ていうのは半分冗談で、ただ純粋に私が美緒先輩と仲良くなりたいって思っただけ。だからこれからも仲良くしてください」


こんなにこにこと曇り一つない笑顔を向けられて、断れる人なんていないと思う。

自然と笑顔を作りながら「うん」と頷くと、沙耶ちゃんは本当に嬉しそうに笑ってくれた。