六月の月に愛を誓う。

するっとさりげなく律希の腕に自分の腕を絡めている沙耶と呼ばれた女の子が「はあー?」と言いながら、顔は笑ったまま律希の頬をつねっていた。


「女の子に向かって気持ち悪いとか言わないでくれるー?」

「いててて!つねんなアホ!」


距離感の近さもそうだけど、律希が私には見せたことのない素を出している気がして、少しだけ胸がちくりと傷んだ。


「美緒、早くー」


いたたまれなくなって俯いていると、先に行っていたはずの梨花が廊下の向こう側から手を上げてきて思わずほっとする。


「じゃあ、私行くね」

「あ、先輩!終わるの教室で待ってるから、一緒に帰ろ!」

「え…でも、結構待たせちゃうかも…」

「いいよ、彼女待つのが彼氏の役目でしょ?」


にっと眩しく笑いながら優しく頭を撫でてきた律希に、さっきまでのモヤモヤが消えて自然と笑顔になっていた。

我ながらすごく単純だ。


「うん、じゃあ一緒に帰りたいから待っててほしい」


昔うまくいかなかった分、今度こそは自分の気持ちを素直に伝えると決めたんだ。