絢斗と会った日から二週間が経った。

あれ以来、絢斗の家の方にはなるべく行かないように気をつけているからか、絢斗と会うことはなく平穏な日々を送っていた。


「あ、美緒先輩ー!」


一週間後に迫っている体育祭の競技練習を放課後の校庭でやるために移動していると、ちょうど練習が終わったのか校内に戻ってきた一年生の群れの中からひょこっと顔を出した律希が手を振ってきた。


「先輩はたしか大玉転がしに出るんだっけ?」

「うん。律希は今練習終わったところ?」

「そうそう、借り物競争の練習してきたとこ。お題が“光ってる丸いもの”だったんだけど、すぐにピンときて校長先生連れて行ったら怒られちゃってさ。だって光ってる丸いものって言ったら校長先生の頭しかなくない?」


周りにいた一年生たちがいたって真面目な律希に堪えきれなくなったかのようにどっと笑っていた。


「もー律希くん面白すぎて困る。彼女さんも苦笑いしちゃってるよ〜」


律希の横からひょこっと出てきた小柄な女の子が「ねえ?」とにこっと可愛らしく笑いかけてきた。

ぱっちりとした大きな二重の瞳にあまりメイクはしていないだろう全てが小さく整った顔立ち、キャラメル色の髪は低めのツインお団子にまとめられていて、誰が見ても美少女で愛嬌がある可愛い女の子だと思った。


「うるせぇよ、沙耶。だーしかもくっつくな!汗がベッタベタで気持ちわりぃ!」