開け放たれていた窓から運動部の綺麗に揃っている掛け声が聞こえてくる。

ふと落としていた視線を上げると、教室の扉の前でちょうどこちらをじっと見ていた男の子と目が合う。


そのまま私たちは時が止まったかのようにしばらく見つめ合った。


「え、あ、あの…？」


ふと我に返り思わず声を漏らすと、男の子はハッとしたように視線を逸らし中に入ってきた。

何も言わずに私の後ろの席まで来ると、机の中からノートを取りそのまま扉の方に戻ってしまった。

どうやら忘れ物を取りに来ただけのようだ。


…それにしても、びっくりしたなあ。

黒髪の少し長めの前髪から覗いていた瞳は、切れ長でまつ毛が長くとても綺麗で、思わず目が逸らせなかった。


なんとなくぼーと男の子の後ろ姿を眺めていると、教室を出る寸前のところでなぜかぴたりと立ち止まりこちらを振り返ってきた。


「…それ」

「…へ？」


まさか話しかけられるなんて思ってもなくて、思わず間抜けな返事をしてしまう。