放課後。
今日の英語の授業、難しかったなぁ。
「はぁ……重たい」
この日の授業が全て終わり、私は重たいカバンを肩にかけ、学校から寮へと向かって歩いていた。
「ぷっ! 真絢ってば、マラソンの完走直後のランナーみたいにフラフラじゃん。今にも倒れそう。はははっ」
「かっ、櫂! いつの間に!? ていうか何なのその例えは。あと、人のこと見て笑わないで!」
こっちは必死だっていうのに、失礼しちゃう。
「あぁ、悪い。カバン、そんなに重いのか? あ、もしかして例の辞書?」
「うん。そうだけど……」
私は、教科書に加えて英和辞典と和英辞典の2冊入ったカバンを見つめる。
私の持っている辞書は、持ち運びに便利な電子辞書……ではなく。昔ながらの分厚い紙の辞書だ。
今日英語の宿題が出たから、本来なら重たい辞書は学校に置いて帰るところを、寮に持って帰らざるを得なくなった。