「なるほどな。隔世遺伝もあるのだから、できれば婚姻してもらうのが、我が国の利益になると思うのだがね。シルヴィアもそなたにぞっこんだ。」
 王は、髭をなでながらニヤッと笑った。

 皇太子が言った。
 「アーサー王子。今回の件で、私のシュルト国との縁談は破棄されるだろう。私としては、ロゼリア姫をエセンから娶りたい。そなたが、シルヴィアをもらってくれれば、さらに嬉しい。」
 
 アーサーは、顔色を変えた。すると、王がすかさずうなずいた。
 「アーサー王子。そなたの血筋には、国内での選抜された女性との婚姻が必要というのであれば、我が娘は側室で迎えてもらって構わない。それで、シルヴィアに子が出来ればこちらに側室の子ということで迎えても良いのだ。」

 アーサーは、膝を付いて頭を下げ、王の顔をしっかり見ながら答えた。
 「それは、出来かねます。婚姻以外が条件です。」
 「なぜだ。我が娘では不服と申すのか?」
 「いえ。シルヴィア姫に不服などありませんが、私には心に決めた女性がおります。その者以外は娶らぬつもりです。父王も母だけを妃としています。エセン王家は子が出来れば側室は持ちません。だからこそ、今回の条件をお話に来たのです。」

 「納得できかねるな。別に構わないだろう。その女性との結婚を阻むつもりはないが。」
 「その女性こそ、ロゼリアです。」
 
 王は目を見張った。そして、皇太子を見た。皇太子は一歩前に出ると、低い声で話し出した。
 「……やはり、そうだったか。馬を率いているロゼリアを見たときから、いやな予感がしていた。なぜ黙っていた。」