二人の打ち合いが始まった。最初は、ピアース隊長に押されているように見えた。
 アーサーは相手の剣を避けながら、飛ぶように移動し、最後には剣をばねに空中を1回転し、降りるとピアースの後ろをとった。
 ピアースも身体をひねって踏み出してきて、二人はお互いの首元に剣を突きつけるとピタッと止まった。
 一瞬シーンと静かになり、その後一斉に歓声があがった。

 王様が立ち上がって、拍手をした。
 「アーサー王子。素晴らしい試合だ。ピアースも良かった。最後にノートンジュニア対ピアース、ディルク対アーサー王子で試合をしてもらおう。いいな。」
 
 仰せのままに、と皇太子が王様に礼をして、4人がそれぞれ2つの円の中に入っていった。
 アーサーは、ピアース隊長との試合で疲れているように見えた。
 皇太子は初戦なので、ハンデがある。だが模擬試合という性質上、勝ち負けよりもお互いの力をみせるのが目的だ。
 私は、アーサーを信じているが、やはり心配だった。祈ることしか出来なかった。
 ピアース隊長との試合を見るだけでも、緊張して怖くて見ていられなかった。
 逃げ出してしまいそうになる気持ちを抑えつけて、深呼吸した。

 シルヴィア姫が、「アーサー様、頑張って」と声を出す。
 ジョアンナ姫も「ディルク様、頑張って」と叫ぶ。
 王妃はそんな二人を見ながら笑っている。

 皇太子とアーサーはお互いに譲らず、打ち合っている。
 ノートンとピアースのほうも打ち合っている。剣のカシーンカシーンと当たる音が響き、皆がそちらに目を向けていた。