教室内のざわめきはその人が入ってきたことで最高潮に達していた。


今日から教育実習生としてこの秘密高校にやってきた男性教師、玉垣英祐。


英祐は3年C組の教卓の前までやってくると生徒たちを見つめた。


たったそれだけのことなのに、女子生徒の間では黄色い悲鳴が上がる。


英祐の整った顔に、きめ細やかでちゃんと手入れされている肌は女子からみても羨ましいくらいだ。芸能人としてでも通用しようなその容姿に、女子生徒たちは早くも目をハートにしている。


あぁ、この調子だったらこのあと定番の質問をするんだろうな。


窓際の席の私は机に肘をついてぼんやりとそう考える。


少し開けている窓から入ってくる風が心地よくて、ついうとうとしそうになってしまう。


眠気を必死に堪えて教卓の前に立つ英祐を見つめる。


「はじめまして、今日から一週間教育実習生としてこの学校でがんばります」


簡単な自己紹介をする英祐に再び黄色い悲鳴が飛び交った。


教室へ入った瞬間から女子たちのハートを掴んでいる英祐に男子たちはおもしろくなさそうな顔をしている。


「玉垣英祐です」


黒板中央に大きく縦書きされたその名前を私はずーっと前から知っていた。


「英祐、お弁当忘れてたよ」