今の声は……。


心臓がドキドキして振り向くことができない。


私は頬に流れた涙を手の甲で拭った。


「理恵」


近づいてくる足音は、私のすぐ後ろで止まった。


「それ以上私に近づかないで」


振り向きもせずに突き放す。


これ以上近づかれると、本当に好きな気持ちに区切りをつけることができなくなってしまう。


中途半端な優しさは期待を生むだけだ。


「理恵、聞いてほしい」


「私はなにも聞きたくない!」


そのままの勢いで両耳を塞いだ。


ギュッと目を閉じてなにも見えなくする。


真っ暗な空間にいると少しだけ落ち着ける気がする。


「理恵……」


それでもその人は私の暗闇を割って入ろうとする。