死出の朝に…④


「私、中1のバレンタインで、中原君にチョコを贈るつもりだったわ。やっぱり好きだったし。でも、ああいった経緯でね…。そんな私を理解してもらってるあなたには、長年よく思ってくれて、今朝、そのことが理解できて感激して…」


「水原…‼」


「無意識で私の”生きた霊波”があなたの思いに反応しちゃったんだと思う。それはなによりも、辛いのはわかるけど、自ら命を断つのを思い留まって欲しい…。その願いからよ❗️だから私、お金とかは無理だけど、心を通じ合った中原君とは、今後も会って、私で力になれることはするから…」


ノボルはスマホからの彼女の”説明”を聞き終わると、一気に涙が両眼からあふれおちてきた…。
それは滝のように…。


これまでも、普通なら金銭的に助けてくれないところ、自分にはいろんな人から良くしてもらえていた。
今度は最後の最後で、中学の同窓生がカンペキにありえない好意と協力を差し伸べてくれたのだ…。
正に、ノブオにとってはキセキが空から降ってきたような、出来事だったに違いない。

そもそも…、あの3人にしても、ユキノの注釈ではノブオにいい感情を持っていなかったら、ああいった特殊空間での”出来事”は成立していないはずだということだった。
つまり、彼女ら3人の同窓生からも、人生に敗北した自分にエールを送ってくれてる証左だと…。
それは、負けるな、ドンマイ、死んじゃダメ❗と、無意識のフレー×2ってとこだったのではなかったか。


さらにユキノは、ノブオを卒倒させるような事実と透視による3人の”現状”を告げたのだ。


「…古澤さんは事実として、10年近く前に白血病で亡くなってるわ。進藤さんは昨日の友達の話だと、東北の農家に嫁いで義理の親を介護してて、同窓会どころじゃないということらしい。…佐々木さんは消息不明ってことだけど…、たぶん、乳がんで左の乳房は切除してるわ。たぶん…」


「!!!」


***


”昨日、オレの右ひじに触れてた、康っちゃんのふくよかな左胸は切除されていたのかよ!スポーツ万能で健康的で元気印のシンボルだった古澤はとっくに病死でこの世にいないなんて…。オレにとって、母性愛の女神たる進藤さんは介護、看病に明け暮れてるのか…。みんな…、それぞれが年相応に巡ってきた因果を真正面からじゃんか…。それに比べて、何やってんだ、このオレはよう‼”


自殺寸前の行為にまで至ったこの男は、怒りに震えていた。
他ならぬ自分自身に対しての…。


自分は何て恵まれた人間なんだ…。
それを自覚できれば、こんな卑怯な幕引きは選択しないはずだ…。


彼は自殺を決意した場所で、一発逆転、再スタートの決意を胸にするのだった…。