この愛に猛る/その5
剣崎
「…おお、アキラか?」
「剣崎さん…!」
「急に朝から、すまん。ちょっと知らせておきたいことがあってな。4、5分なんだが今、話せるか?」
「ええ…、そのくらいなら…。あっ、ちょっと待っててください」
アキラの部屋には、誰かいるみたいだ…
ああ、そうか…、ケイコだな
...
「もしもし…。剣崎さん、しばらくです…」
受話器からの声は、いきなりケイコだった
「ケイコか?」
ケイコは元気に返事をしてたよ
「私…、今、アキラのアパートに住まわせてもらってるんです」
「そのようだな…。どうだ、順調にやってるか?声の様子では元気満々って感じだが(笑)」
「何とか頑張ってますよ、二人で…。約束もしっかりです、私たちは。そちらもそれで、大丈夫なんですよね?」
ケイコめ、早速肝心なとこを聞いてきやがる(苦笑)
「こっちも約束通りやってる。今日は、そのことに関連してなんだが、どうする?お前に話してもいいが…」
「いえ、アキラに代わります…」
アキラはすぐに電話口に戻ってきた
...
「…そうですか。実はこっちの界隈でも、やくざと繋がってる不良どもを経由して、色々二人の耳に届いていますよ。さまざまです…」
「うん、そうらしいな。麻衣からも、そんな風潮が強くなってると聞いてるよ。とにかく、実情はオレ達の業界外と繋がっちまってる。俺個人としては、遺憾な事態だと思っているが…。いずれにしても、不審な人物からの接触があったら、今から言う連絡先に電話しろ」
アキラには、現状の情勢が二人にも、何らかの影響が及び兼ねない流れになってきていることを、率直に伝えた
どうやらあいつら二人には、かなりの情報が入っていたようで、アキラの口ぶりからは、さして動揺は感じられなかった
まあ、ケイコは都県境ではガキどもの諸事情には今も接点があるだろうし、すでに自分たちの置かれたポジションというものを、かなり客観的かつ冷静に捉えることが出来てるんだろう
俺は正直、ホッとした
何と言っても、アキラとケイコが不安に陥るのが最もマズイからな…
...
「じゃあ何かあれば、ここに電話します。ケイコにもちゃんと控えさせますので。ああ、実は今日、彼女の誕生日なんですよ。17歳の…。それで、これからケイコの家に二人で行くんです。向こうのお母さんには、初めての挨拶になります…」
アキラの口調はとても落ち着いていて、力強くもあったな
「…そうか。おめでとう。だが、俺達が巻き込んじまったことで、お前たちには苦労を掛けたな。時間はかかるだろうが、二人が認めてもらうことを願っている…」
「ありがとうございます。…それから、これも小耳に挟んだんですが、今日だか明日、麻衣の婚約パーティーみたいなものがあるとか…。もしかしたら、麻衣と一緒なんですか?」
「はは…、麻衣は母親を連れて、こっちに向かってるところだ。明日、伊豆のホテルで披露が催される。…アキラ、オレが言うのもなんだが、麻衣と倉橋も真剣に愛し合ってるよ。命を懸けて毎日を生きてる。それだけは伝えたい…」
「わかりました。立場的に祝意は控えますが、できれば麻衣には、一応人妻になるんだから、いい加減無茶はやめて一人の女として幸せを求めて欲しいです」
「その言葉、麻衣に伝えるか?」
「いいえ。剣崎さんの胸の内でお願いします」
「了解した。だが…、なんとも奇遇なもんだな。お前たち3人が、それぞれ愛する相手と、大きなターニングポイントをほぼ同時に迎えるなんてな…」
俺は思わず感慨に浸った
こいつらの愛が地獄に片足を突っ込んでいたとも言うべき局面を、この俺はリアルに間近で接してきたんだ…
いくらこの世界に生きる人間でも、特別な感傷には至るさ
ふと、夏の終わりに車中で、ケイコが大量に流した涙の臭いを思い出したわ
その後、電話を切って数分…
倉橋からの電話が入った
...
”一行”はすでに静岡県内に入っていて、高速のパーキングからだった
「…そうっすか。なら、そちらには明朝ってことでいいんですね?」
「ああ、今日は麻衣の”家族”と水入らずで過ごしてやれ。それと、ミカの様子は大丈夫だな?」
「全く問題ないですよ。麻衣とは実の姉妹みたいにキャンキャンやってますわ。麻衣の母親が握ったおにぎり、泣きながら食ってましたよ。あんなミカは初めて見ましたわ」
「そうか…。まあ、せっかくだから楽しくやってくれ。こっちは抜かりなく手配しておくから、能勢だけ頼む」
「了解しました。では、明日出る前に連絡しますわ」
倉橋の奴も、どこか声が和んでいたな…(苦笑)
さあ、なにしろ明日だ
相和会にとっても、今後を決める重要な一日になるぞ
剣崎
「…おお、アキラか?」
「剣崎さん…!」
「急に朝から、すまん。ちょっと知らせておきたいことがあってな。4、5分なんだが今、話せるか?」
「ええ…、そのくらいなら…。あっ、ちょっと待っててください」
アキラの部屋には、誰かいるみたいだ…
ああ、そうか…、ケイコだな
...
「もしもし…。剣崎さん、しばらくです…」
受話器からの声は、いきなりケイコだった
「ケイコか?」
ケイコは元気に返事をしてたよ
「私…、今、アキラのアパートに住まわせてもらってるんです」
「そのようだな…。どうだ、順調にやってるか?声の様子では元気満々って感じだが(笑)」
「何とか頑張ってますよ、二人で…。約束もしっかりです、私たちは。そちらもそれで、大丈夫なんですよね?」
ケイコめ、早速肝心なとこを聞いてきやがる(苦笑)
「こっちも約束通りやってる。今日は、そのことに関連してなんだが、どうする?お前に話してもいいが…」
「いえ、アキラに代わります…」
アキラはすぐに電話口に戻ってきた
...
「…そうですか。実はこっちの界隈でも、やくざと繋がってる不良どもを経由して、色々二人の耳に届いていますよ。さまざまです…」
「うん、そうらしいな。麻衣からも、そんな風潮が強くなってると聞いてるよ。とにかく、実情はオレ達の業界外と繋がっちまってる。俺個人としては、遺憾な事態だと思っているが…。いずれにしても、不審な人物からの接触があったら、今から言う連絡先に電話しろ」
アキラには、現状の情勢が二人にも、何らかの影響が及び兼ねない流れになってきていることを、率直に伝えた
どうやらあいつら二人には、かなりの情報が入っていたようで、アキラの口ぶりからは、さして動揺は感じられなかった
まあ、ケイコは都県境ではガキどもの諸事情には今も接点があるだろうし、すでに自分たちの置かれたポジションというものを、かなり客観的かつ冷静に捉えることが出来てるんだろう
俺は正直、ホッとした
何と言っても、アキラとケイコが不安に陥るのが最もマズイからな…
...
「じゃあ何かあれば、ここに電話します。ケイコにもちゃんと控えさせますので。ああ、実は今日、彼女の誕生日なんですよ。17歳の…。それで、これからケイコの家に二人で行くんです。向こうのお母さんには、初めての挨拶になります…」
アキラの口調はとても落ち着いていて、力強くもあったな
「…そうか。おめでとう。だが、俺達が巻き込んじまったことで、お前たちには苦労を掛けたな。時間はかかるだろうが、二人が認めてもらうことを願っている…」
「ありがとうございます。…それから、これも小耳に挟んだんですが、今日だか明日、麻衣の婚約パーティーみたいなものがあるとか…。もしかしたら、麻衣と一緒なんですか?」
「はは…、麻衣は母親を連れて、こっちに向かってるところだ。明日、伊豆のホテルで披露が催される。…アキラ、オレが言うのもなんだが、麻衣と倉橋も真剣に愛し合ってるよ。命を懸けて毎日を生きてる。それだけは伝えたい…」
「わかりました。立場的に祝意は控えますが、できれば麻衣には、一応人妻になるんだから、いい加減無茶はやめて一人の女として幸せを求めて欲しいです」
「その言葉、麻衣に伝えるか?」
「いいえ。剣崎さんの胸の内でお願いします」
「了解した。だが…、なんとも奇遇なもんだな。お前たち3人が、それぞれ愛する相手と、大きなターニングポイントをほぼ同時に迎えるなんてな…」
俺は思わず感慨に浸った
こいつらの愛が地獄に片足を突っ込んでいたとも言うべき局面を、この俺はリアルに間近で接してきたんだ…
いくらこの世界に生きる人間でも、特別な感傷には至るさ
ふと、夏の終わりに車中で、ケイコが大量に流した涙の臭いを思い出したわ
その後、電話を切って数分…
倉橋からの電話が入った
...
”一行”はすでに静岡県内に入っていて、高速のパーキングからだった
「…そうっすか。なら、そちらには明朝ってことでいいんですね?」
「ああ、今日は麻衣の”家族”と水入らずで過ごしてやれ。それと、ミカの様子は大丈夫だな?」
「全く問題ないですよ。麻衣とは実の姉妹みたいにキャンキャンやってますわ。麻衣の母親が握ったおにぎり、泣きながら食ってましたよ。あんなミカは初めて見ましたわ」
「そうか…。まあ、せっかくだから楽しくやってくれ。こっちは抜かりなく手配しておくから、能勢だけ頼む」
「了解しました。では、明日出る前に連絡しますわ」
倉橋の奴も、どこか声が和んでいたな…(苦笑)
さあ、なにしろ明日だ
相和会にとっても、今後を決める重要な一日になるぞ