この愛に猛る/その4
麻衣
伊豆に向かう日の早朝4時半…
トイレで目が覚め、2階の部屋から階段を降りると、台所が明るかった
お母さん…
母はおにぎりを握っていたわ…
...
車内での朝食は、私の母が作ったおにぎりだった
「なんておいしいの…、このおにぎり…」
ミカさんは車の中で、母の握ったおにぎりを手に、目が潤んでいた
涙を拭いながら、文字通り噛みしめるように食べていたよ…
...
「優輔さん、もうひとつどう?」
助手席の優輔さんは、二つぺろりと平らげちゃってたんでね
「ああ…、もらおうかな」
「今度は何がいい?シャケの他にも、たらこと梅干があるけど」
私の隣に乗ってるお母さんはそう言って、膝の上で、おにぎりの具をチェックしてる
「じゃあ、たらこをいただきます。とにかくおいしいですよ、お母さん」
「まあ、嬉しいわ、お婿さんに褒められると…。いっぱい食べて。はい、麻衣…、これね」
真ん中に座ってる私は、たらこのおにぎりを受取り、助手席の優輔さんに手渡した
「運転手さんもどう?まだあるから…」
今日の運転は能勢さんだった
「おお…、能勢、遠慮せずにいただけ。俺達には、めったに口にできないからな、こんなおふくろの味は…(笑)」
「そうですね。では、シャケをもうひとつください。俺、大好きなんですよ、シャケのおにぎり。具も一杯入ってて、こんなおいしいシャケにぎり、初めてですよ」
もう、みんな‥、たかがおにぎりに大げさだなあ…(苦笑)
そんで、おふくろの味が目に眩しいのか、ミカさんは相変わらず、鼻で涙をすすりながらもぐもぐだ…
でも、母はとてもうれしそうだ
この人のこんな顔見るの、久しぶりだなあ…
...
いやあ…、しかし、いい天気でよかった
風は穏やかだし、空は青くて気温もちょうどいい
午前9時半、静岡県内の高速PAでトイレ休憩中だわ
もっともお母さんは、売店で早くもお土産とか買い物しまくってる(苦笑)
私は、用を足した後、ベンチで煙草を吸ってるミカさんの横に座った
「ミカさん、いい天気でよかったね。何しろこうも秋晴れだと、人の顔まで晴れ晴れして見えてくるわ、ハハハ…」
「じゃあ、私の顔も晴れかしら?」
「ええ、快晴ですね、今日のミカさんは…。でもまあ、今朝はちょっとにわか雨だったか、はは…」
「車の中では見苦しいとこ、お見せしちゃったわ。ごめんなさいね」
「いえー、かえって母は喜んでましたよ。あんな嬉しそうにしてるお母さん、しばらくぶりだった…。今日と明日だけでも親戚のお姉ちゃんでお願いしますね」
「私こそ、嬉しいんですよ。本当の身内に囲まれてるようで、心が温まる。この二日間は、私にとって、宝物のような時間になるわ」
宝物…
世間の人からしたら、そんなささいな時間も、この人には特別な時間なんだよ
ミカさんがどんな過去を背負ってきたかを知ってるだけに、その言葉、心に染み込んでくるって…
...
「あのね…、あなたには隠しておきたくないんで、言っときたいんだけど…。でも、あなたのことだから、もう気付いてるかもしれないか…。実は、私にも恋人が出来たんですよ」
「…バグジーですね、相手は」
「やっぱりか…。分かってたのね、麻衣さん」
「まあ、なんとなく…。でも、お似合いですよ、お二人。私、ミカさんとバグジーは気が合うかなって思ってましたし…」
「そう…。じゃあ、二人をセットしてくれたあなたは、恋のキューピットね。感謝しなくちゃ(笑)。なにしろ、会ってすぐ好きになったわ、私たち。で…、その夜にはもう愛し合った。もちろん、私は男としての彼に抱かれたし、男性として愛してる。彼も私を女として抱いてくれ、イッてくれたわ…」
「なら、バグジーが女の内面を持ってることも承知してるんですね?」
「うん。私たち、それクリアしてる。私…、麻衣さんを二人で守り切ったら、たぶん今の”仕事”やめるわ。それで、彼の生まれ故郷の信州に行く。彼と生きていくつもりよ。とにかく、あなたに出会えてよかった。麻衣さんにはお礼を言うわ。本当にありがとう…」
「ミカさん…」
口からはそう出たが、心の中では”お姉ちゃん”と呼んでた
私だって、この人と接することが出来てよかったと思うよ
...
「…今、剣崎さんに電話してきた。西からは、何人か今日のうちに到着するらしい。こっちが着いたら、能勢だけ叔父貴のところに行かせて、俺達が合流するのは明日の朝でいいそうだ」
「じゃあ、優輔さんも今晩は一緒に泊まってくれるの?」
「おお。旅館は二部屋予約してるしな。部屋割りはお前に任せる」
「そんなら、優輔さんと私、お母さんとお姉ちゃん、これでいい?」
「まあ、夕飯だけは一緒に食おうや。宿に着いたら、頼んどいてくれ(照笑)」
サングラスをかけていない撲殺男の照れた顔、かわいいんだけど…(笑い)
麻衣
伊豆に向かう日の早朝4時半…
トイレで目が覚め、2階の部屋から階段を降りると、台所が明るかった
お母さん…
母はおにぎりを握っていたわ…
...
車内での朝食は、私の母が作ったおにぎりだった
「なんておいしいの…、このおにぎり…」
ミカさんは車の中で、母の握ったおにぎりを手に、目が潤んでいた
涙を拭いながら、文字通り噛みしめるように食べていたよ…
...
「優輔さん、もうひとつどう?」
助手席の優輔さんは、二つぺろりと平らげちゃってたんでね
「ああ…、もらおうかな」
「今度は何がいい?シャケの他にも、たらこと梅干があるけど」
私の隣に乗ってるお母さんはそう言って、膝の上で、おにぎりの具をチェックしてる
「じゃあ、たらこをいただきます。とにかくおいしいですよ、お母さん」
「まあ、嬉しいわ、お婿さんに褒められると…。いっぱい食べて。はい、麻衣…、これね」
真ん中に座ってる私は、たらこのおにぎりを受取り、助手席の優輔さんに手渡した
「運転手さんもどう?まだあるから…」
今日の運転は能勢さんだった
「おお…、能勢、遠慮せずにいただけ。俺達には、めったに口にできないからな、こんなおふくろの味は…(笑)」
「そうですね。では、シャケをもうひとつください。俺、大好きなんですよ、シャケのおにぎり。具も一杯入ってて、こんなおいしいシャケにぎり、初めてですよ」
もう、みんな‥、たかがおにぎりに大げさだなあ…(苦笑)
そんで、おふくろの味が目に眩しいのか、ミカさんは相変わらず、鼻で涙をすすりながらもぐもぐだ…
でも、母はとてもうれしそうだ
この人のこんな顔見るの、久しぶりだなあ…
...
いやあ…、しかし、いい天気でよかった
風は穏やかだし、空は青くて気温もちょうどいい
午前9時半、静岡県内の高速PAでトイレ休憩中だわ
もっともお母さんは、売店で早くもお土産とか買い物しまくってる(苦笑)
私は、用を足した後、ベンチで煙草を吸ってるミカさんの横に座った
「ミカさん、いい天気でよかったね。何しろこうも秋晴れだと、人の顔まで晴れ晴れして見えてくるわ、ハハハ…」
「じゃあ、私の顔も晴れかしら?」
「ええ、快晴ですね、今日のミカさんは…。でもまあ、今朝はちょっとにわか雨だったか、はは…」
「車の中では見苦しいとこ、お見せしちゃったわ。ごめんなさいね」
「いえー、かえって母は喜んでましたよ。あんな嬉しそうにしてるお母さん、しばらくぶりだった…。今日と明日だけでも親戚のお姉ちゃんでお願いしますね」
「私こそ、嬉しいんですよ。本当の身内に囲まれてるようで、心が温まる。この二日間は、私にとって、宝物のような時間になるわ」
宝物…
世間の人からしたら、そんなささいな時間も、この人には特別な時間なんだよ
ミカさんがどんな過去を背負ってきたかを知ってるだけに、その言葉、心に染み込んでくるって…
...
「あのね…、あなたには隠しておきたくないんで、言っときたいんだけど…。でも、あなたのことだから、もう気付いてるかもしれないか…。実は、私にも恋人が出来たんですよ」
「…バグジーですね、相手は」
「やっぱりか…。分かってたのね、麻衣さん」
「まあ、なんとなく…。でも、お似合いですよ、お二人。私、ミカさんとバグジーは気が合うかなって思ってましたし…」
「そう…。じゃあ、二人をセットしてくれたあなたは、恋のキューピットね。感謝しなくちゃ(笑)。なにしろ、会ってすぐ好きになったわ、私たち。で…、その夜にはもう愛し合った。もちろん、私は男としての彼に抱かれたし、男性として愛してる。彼も私を女として抱いてくれ、イッてくれたわ…」
「なら、バグジーが女の内面を持ってることも承知してるんですね?」
「うん。私たち、それクリアしてる。私…、麻衣さんを二人で守り切ったら、たぶん今の”仕事”やめるわ。それで、彼の生まれ故郷の信州に行く。彼と生きていくつもりよ。とにかく、あなたに出会えてよかった。麻衣さんにはお礼を言うわ。本当にありがとう…」
「ミカさん…」
口からはそう出たが、心の中では”お姉ちゃん”と呼んでた
私だって、この人と接することが出来てよかったと思うよ
...
「…今、剣崎さんに電話してきた。西からは、何人か今日のうちに到着するらしい。こっちが着いたら、能勢だけ叔父貴のところに行かせて、俺達が合流するのは明日の朝でいいそうだ」
「じゃあ、優輔さんも今晩は一緒に泊まってくれるの?」
「おお。旅館は二部屋予約してるしな。部屋割りはお前に任せる」
「そんなら、優輔さんと私、お母さんとお姉ちゃん、これでいい?」
「まあ、夕飯だけは一緒に食おうや。宿に着いたら、頼んどいてくれ(照笑)」
サングラスをかけていない撲殺男の照れた顔、かわいいんだけど…(笑い)