この愛に猛る/その3
ケイコ




「最後にもう一つ…。今の話の延長になるけど、明後日の麻衣の婚約披露が終わると、麻衣に対する関東サイドの関心がさらに高まるだろうってことでさ…、場合によっては、麻衣自身が直接狙われる可能性もあると…。追川さんはそう見てるよ」

これも、今までの話を聞いてると納得だよ

特に私は、砂垣さんからも別枠で麻衣が危険な立場にいるって聞いてたからさ、なおさら緊迫感を感じる

もうヤバいって、麻衣のヤツ…


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「…関東本家では、これからますます麻衣に目をつけて、これも情報収集だよね。でだ…、その麻衣の関連ってことで、ケイコちゃんとオレにも関わってくるんじゃないかって。ふう…、追川さんはそれも、はっきり指摘してたよ」

「麻衣への切り口からもか…。そうだよな、そのタクヤって男なんかは麻衣とアキラ両方を結びつけてるもんね。あのヤロウ、いい加減、おとなしくできないのかよだ!」

また熱くなってきたわ…

あんなヤツ、どうなろうが知ったことかって気持ちは今もある

例え殺されようが、自業自得だって…

でも…、できれば麻衣にはもうこれ以上は入り込まないで欲しかった気持ちもあるよ

それが、相和会の幹部なんかと結婚する道を選んで、その立場でこれまでを超える行動だ

もう手に負えないよ

アイツのイカレ度は青天井だったわ


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「オレも、麻衣があのままおとなしくなるとは思えなかったけど、まさか相和会内部の人間になるとはな…。全く、アイツはどこまで行く気なんだ…」

アキラも、麻衣によって私たちが危険に巻き込まれることだけでなく、麻衣のことは案じてる…

でも、もう麻衣は私たちの手の届かないところまで行ってるよ

それは、はるかに遠いところまで…


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追川さんとアキラの話に関しては、夕食前、約2時間に及んだ

かなりリアルな内容ではあったが、私たちは逃げずに向き合った

追川さんという頼れる存在も大きいが、今のアキラと私は腹が据わってるよ

それは以前とは比べものにならないほど

マジで、命を張ってる…

大げさのようだが、そんな気構えの自負はあるって


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そして明日だ

ここまで力を合わせてやってきた二人にとって、その明日は、とても大きな意味を持つ日になる

17歳の誕生日に、二人で”私の家”に”行く”…

お父さんは海外でいないけど、お母さんにはアキラを紹介できる

もちろん、いきなりは二人を認めてくれない

それはわかってる

だけど、妹の美咲は私たちを理解してくれ、二人を応援してくれてる

追川さんが言ってくれたように、いずれ必ず、アキラと私が一緒に生きていくことを許してくれるはずだ

明日はその第一歩なんだ


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寝る前、祥子たちにもらった旅行券をテーブルに置いて、さあ、行先を決めるぞ

私たちはともに3か所候補地を考え、私が17歳になったその瞬間、計画を立てようってことにしていたんだ

「じゃあ、お互いに3か所を書いた紙をテーブルに出そう」

「うん、じゃあ、一斉のせーでね」

パタン!

レポート用紙2枚は勢いよく、旅行券の両脇を固めた

さあ、アキラはどこを候補地にしたのかな…

「わあ、第一候補、私と一緒じゃん!」

「アハハハ…、参ったなあ…。こりゃ、即決ってことかな」

なんと、アキラと私の旅行券の使い道第一候補は、ピタリと一致だった

それは…


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「…ケイコちゃんとはさ、いろんなとこ行きたいって気持ちはあるんだけど…、”明日”が終わったら、やっぱりオレの実家に来てもらって、その後、山梨の観光地を回ってってね…。いいの、ケイコちゃんもそれで…」

「うん、アキラの生まれ育ったところに行って、お母さんにご挨拶済ませてね、それで、山梨のあちこちを一緒に巡りたい。へへ…、じゃあ、細かい場所とか決めようよ」

その夜、布団の中でアキラと私は地図を眺めながら、宿泊先とかルートのプランを練ってね

明日、実家に行った帰りに本屋でガイドブックを買ってこようということになった

さあ、明日は我が家に愛するアキラを連れて凱旋だ!


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その晩の夢にはお兄ちゃんが出てきた

会ったことのない、2歳上の兄…

私の17歳の誕生日を祝ってくれ、隣のイスに座ってる恵一兄ちゃんは、終始笑ってた

産まれてわずか数週間で、この世を去った兄の顔は当然知らない

だが、夢の中のイメージでは、間違いなくアキラだった…

恋人でもあるアキラも兼ねていて、でもお兄ちゃんだったよ

その夢の中の兄はとても優しく、私は大好きだった

まあ、だいぶヘンテコな夢なんだけど…

でも、何で”この日”にこんな夢を見たのか…

私にはなんとなく理由がわかっていた