この愛に猛る/その29
剣崎&麻衣
その案を、西の御大はそのまま受け入れてくれたよ
かくて、倉橋&麻衣の最狂カップルは西方行脚の途についた
で…、その成果は我々の想定を大きく超えたものがあった
五島さんも助川さんも麻衣にはただならぬ関心を示し、最狂カップルの二人には、そのスポークスマンとしてのバリューをしっかりと感じ取ってもらった
要は、この二人で持っていける!
そう踏んでもらったって訳だ
俺はしてやったりだったわ
フン…、倉橋と麻衣の二人なら、主だった西の陣営には相馬豹一会長の幻影を最大限にプラス面で投影できる…
これは俺が当初から確信していたことだ
...
「…折しも、撲殺男として名を馳せたこの倉橋が本郷麻衣と婚約し、そのことを助川さんに告げると、御大は即座に相馬の神髄を最も醸している年の離れた二人を、今回の西と相和会の架け橋にしようと提案してくれましてねえ…。そこで先月、相和会幹部の剣崎を付け、五島さんと助川さんには二人に会うてもらったという訳ですわ」
ここまでくると皆さん方が、もう叔父貴の話にクギつけ状態なのが手に取るように分かったよ
皆、心の芯を震わせている…
俺は会場内の空気でそう悟った
...
「…後日、助川さんはわしにこう言うてくれましたわ。おお、伊豆よう、相馬さんは天国からあの二人を結び付けたんだろう。ならば、あの二人を祝福する席で、西と相和会の新たな門出を誓い合う場とする。これが一番じゃろうがと…」
ここで今日の到達点に行き着いたと言っていい
会場内はにわかにざわめき、その”結論”を共有し合うのを待ちきれんばかりと言った現象が起こった
”伊豆の親分、今日は最高の場じゃ!”
”そうや!撲殺もんと麻衣ちゃんがここにおるみんなをつなげてくれたんじゃ。大同団結でいけばええ”
これは…
もはや会場内には、言い様のない妖しいエネルギーが醸成し、異様な熱気ははち切れんばかりに充満していた
今、目の前で展開されている光景に、俺は興奮を抑えることが出来ない…
...
「ありがとう、ありがとう…。感謝、感謝じゃ。今日は酒を浴びるほど飲んだが、ちっとも酔えんかった。だが、今の皆さんの声を聞いて一気にへベロケになってしもうた。…何分、はぐれ者じゃが、新しい相和会を頼んます。皆さん、この通りですわ…」
次の瞬間、沸き起こった盛大な拍手と激励の声は、まさに天を突き抜けんばかりだった
凄いって
鼓膜が割れそうだって…
...
伊豆の叔父さんの魂をかち割らんばかりの大演説は、およそ15分に及んだ
私、この叔父さん大好きだ!
...
隣の愛する人も、唇を震わせてた
私は自然と右に体をそらし、彼に身を預けていた
優輔はその私の肩を引き寄せた
それは乱暴で強引だった
でも、とても優しい気持ちを感じたよ
...
私は生前の相馬会長と何度か、二人きりでじっくりと話した
その相馬さんの口から明石田の親分の名が出たのは、たった2度だった
それは、かつての戦争が終わった直後に復員船で出会った時のこと、そして長年ずっと二人三脚で生死を共に歩んできたこと…
それだけだった
だけど、あの二人には、そこにこそ生きた証のすべてが凝縮されていたんだろうね
...
相馬さんは、弟分の明石田さんがいなかったら、とっくに殺されていたことも、独立系の盟主として相和会を存続させることなど叶わなかったことを十分承知していたと思うんだ
その明石田さんのもと、矢島さんや建田さん、その下の剣崎さんや北原さんらが従来の極道とは別のアイデンティティーをもって戦後30年余を生き抜いてきた
その疾走の成果が、相馬さんが死んで新体制を築くこの数か月間に試されたと言える
相馬さんに引き寄せられた幾多の異端児達によって、様々な化学反応を繰り返し越こし、今”ここ”に至った
私とおけいを含めて…
でも今日、今時点の”ここ”が約束された地だということは、皆心の奥深くで自覚してるんじゃないかな
矢島さんは新義友会の幹部らと握手して感極まってるし、勝田さんは犬飼さんとイッキ飲みに興じている…
助川の御大さんはこれ以上ない満面の笑みで、スピーチを終えた明石田のおじさんと体を触れあって、なんか、スポーツの試合後のたたえ合いみたいな絵柄だし(苦笑)
わずか17歳のケツの青い小娘の私が、こんなすげー場面に立ちあってる…
リアルに
奇跡だって、これってさ…
...
って訳で、感傷的になっている私だが、”その眼”は幾多の機能を搭載でね…
そんでだ、見える見える…
ひい、ふう、みい…
”ふん、アホくさ”とかって、内心で囁く輩をレーダーで探知だよ
剣崎&麻衣
その案を、西の御大はそのまま受け入れてくれたよ
かくて、倉橋&麻衣の最狂カップルは西方行脚の途についた
で…、その成果は我々の想定を大きく超えたものがあった
五島さんも助川さんも麻衣にはただならぬ関心を示し、最狂カップルの二人には、そのスポークスマンとしてのバリューをしっかりと感じ取ってもらった
要は、この二人で持っていける!
そう踏んでもらったって訳だ
俺はしてやったりだったわ
フン…、倉橋と麻衣の二人なら、主だった西の陣営には相馬豹一会長の幻影を最大限にプラス面で投影できる…
これは俺が当初から確信していたことだ
...
「…折しも、撲殺男として名を馳せたこの倉橋が本郷麻衣と婚約し、そのことを助川さんに告げると、御大は即座に相馬の神髄を最も醸している年の離れた二人を、今回の西と相和会の架け橋にしようと提案してくれましてねえ…。そこで先月、相和会幹部の剣崎を付け、五島さんと助川さんには二人に会うてもらったという訳ですわ」
ここまでくると皆さん方が、もう叔父貴の話にクギつけ状態なのが手に取るように分かったよ
皆、心の芯を震わせている…
俺は会場内の空気でそう悟った
...
「…後日、助川さんはわしにこう言うてくれましたわ。おお、伊豆よう、相馬さんは天国からあの二人を結び付けたんだろう。ならば、あの二人を祝福する席で、西と相和会の新たな門出を誓い合う場とする。これが一番じゃろうがと…」
ここで今日の到達点に行き着いたと言っていい
会場内はにわかにざわめき、その”結論”を共有し合うのを待ちきれんばかりと言った現象が起こった
”伊豆の親分、今日は最高の場じゃ!”
”そうや!撲殺もんと麻衣ちゃんがここにおるみんなをつなげてくれたんじゃ。大同団結でいけばええ”
これは…
もはや会場内には、言い様のない妖しいエネルギーが醸成し、異様な熱気ははち切れんばかりに充満していた
今、目の前で展開されている光景に、俺は興奮を抑えることが出来ない…
...
「ありがとう、ありがとう…。感謝、感謝じゃ。今日は酒を浴びるほど飲んだが、ちっとも酔えんかった。だが、今の皆さんの声を聞いて一気にへベロケになってしもうた。…何分、はぐれ者じゃが、新しい相和会を頼んます。皆さん、この通りですわ…」
次の瞬間、沸き起こった盛大な拍手と激励の声は、まさに天を突き抜けんばかりだった
凄いって
鼓膜が割れそうだって…
...
伊豆の叔父さんの魂をかち割らんばかりの大演説は、およそ15分に及んだ
私、この叔父さん大好きだ!
...
隣の愛する人も、唇を震わせてた
私は自然と右に体をそらし、彼に身を預けていた
優輔はその私の肩を引き寄せた
それは乱暴で強引だった
でも、とても優しい気持ちを感じたよ
...
私は生前の相馬会長と何度か、二人きりでじっくりと話した
その相馬さんの口から明石田の親分の名が出たのは、たった2度だった
それは、かつての戦争が終わった直後に復員船で出会った時のこと、そして長年ずっと二人三脚で生死を共に歩んできたこと…
それだけだった
だけど、あの二人には、そこにこそ生きた証のすべてが凝縮されていたんだろうね
...
相馬さんは、弟分の明石田さんがいなかったら、とっくに殺されていたことも、独立系の盟主として相和会を存続させることなど叶わなかったことを十分承知していたと思うんだ
その明石田さんのもと、矢島さんや建田さん、その下の剣崎さんや北原さんらが従来の極道とは別のアイデンティティーをもって戦後30年余を生き抜いてきた
その疾走の成果が、相馬さんが死んで新体制を築くこの数か月間に試されたと言える
相馬さんに引き寄せられた幾多の異端児達によって、様々な化学反応を繰り返し越こし、今”ここ”に至った
私とおけいを含めて…
でも今日、今時点の”ここ”が約束された地だということは、皆心の奥深くで自覚してるんじゃないかな
矢島さんは新義友会の幹部らと握手して感極まってるし、勝田さんは犬飼さんとイッキ飲みに興じている…
助川の御大さんはこれ以上ない満面の笑みで、スピーチを終えた明石田のおじさんと体を触れあって、なんか、スポーツの試合後のたたえ合いみたいな絵柄だし(苦笑)
わずか17歳のケツの青い小娘の私が、こんなすげー場面に立ちあってる…
リアルに
奇跡だって、これってさ…
...
って訳で、感傷的になっている私だが、”その眼”は幾多の機能を搭載でね…
そんでだ、見える見える…
ひい、ふう、みい…
”ふん、アホくさ”とかって、内心で囁く輩をレーダーで探知だよ