この愛に猛る/その27
剣崎



叔父貴の主催者代表挨拶は、スピーチというか演説だった(笑)

しかし、まさかここまで明快なアプローチで御仁方に迫るとは…

10Mほど先の矢島さんに目をやると、あの人もちょっと度肝を抜かれたような顔つきをしてるしな

相和会の目指す進路は、正直、この業界の人間には口が裂けても言えない

それは叔父貴だって百も承知で、”あそこまで”公言したんだ

もっとも、今の叔父貴の話を耳にしたって、ここにいる誰もが俺達の”行先”など想像もできないだろう

フフフ…、明石田さんは言ってみりゃあ、トリックを使ったんだ


...



長年の間、関東も関西も相和会を取り込めれば、おいしい思いが出来るんだがと心を躍らせていた

だから東西問わず、隙あらば、相和会を我が陣営へとやっきになっていた

これこそが、ここ数十年の実際だ

だが、それは同時に見果てぬ夢として、彼らには延々と時間だけが過ぎ去って行った

さぞ歯ぎしりしていたことだろうよ

それがたった今、叔父貴の口からああもあっさり、ごちそうのメニューが飛び出したんだ

連中からしたら、そうなるんなら、あんたらどことへでもどうぞだ

好きに異端児の道を歩いてくれと…

ふん…、もうその頭から、相和会の”進路”なんか関心の対象から消え去ったってとこだ

このことは大きい

大きいぞ、とてつもなく…

結果的に叔父貴の目くらだましだろうが、我々の最も欲しいものがここで釣れたんだ

今日すべてとは言わないまでも、事前の想定をかなり上回る”協力者”を得たんじゃねえか、ここで

さあ、叔父貴のフィニッシュを見届けよう


...


「…我らのこの思いは、伝え方を慎重にせんと誤解を生み、一歩間違えりゃ互いの疑心暗鬼が増大する負の悪循環に陥る。そこから敵対関係に至る恐れとは、常に背中合わせだと思うとりました。そこで助川さんに相談に乗ってもらい、まずは最低限の下地つくりを敷いた上で、然るべき公の場で主だった諸氏にお集まりいただき、確固たる理解と共通認識を確かめ合う機会を設けることが望ましいとの結論に至りましてな」

これもまた、誇張はない

ここに至る仮定での事実だ

「…その際、入り口部分では、やはり双方間でのわかりやすい大義があった方がええだろうということになりましたわ。そうとなれば、大阪万博における西の皆さんとの心のしこりを、ここで完全に解消するってんなら、まさしく大義にふさわしいだろうと…」

渾身…

俺と叔父貴は、この過程ではその思いで身を削ったよ

「ただ、そのことを掲げていきなり一堂に集まってもらっても、
やはり唐突だ。何故今なのかってことにもなる。ここはまず、それなりのきっかけを作って、互いが近しくなる機運を高めることが肝要だろうということになった。ちょうど、相和会の若いもんが塀から出て来よって、諸般の事情でマトにかけられる気配があってたんで、西のどなたかに預かっていただこうと、助川さんにお願いしたんですわ」

明石田さん、いよいよ締めに入るぞ