『あら〜。久しぶりねぇ。カナメ君。元気してた?最近は全然来ないからぁ。』

『…こんにちは。ナナミいますか?』

ナナミの家に到着しインターフォンを押すと、ドアを開けて出てきたのは、彼女の母親だった。

俺は軽く挨拶をして、ナナミがいるか尋ねた。

付き合いが長い相手なので、かしこまった挨拶をする必要はない。

『あの子、今日ね。風邪みたいなの。声も全然出てなかったからねぇ。様子を見たわけじゃないけど、すごく体調が悪いみたい。』

よかった。

とりあえず、家にはいるようだ。

俺は少しだけ安堵した。

『そうなんですね。申し訳ないんですけど、部屋に上げてもらってもいいですか?ナナミに誕生日プレゼントをどうしても渡したいんです。』

『ありがとね。でもあの子、風邪ひいてるみた…。』

『お願いします。』

俺は食い気味にそう言って、頭を下げた。

ナナミの母親が、驚いた様子で俺を見ている。

失礼かもしれないが、今は余裕がない。

胸騒ぎが気のせいだったら、後で謝ろう。

『…わかったわ。それはいいけど、カナメ君どうかした?怖い顔しちゃって。何か変ね。』

『ははは…。』

付き合いが長くてよかった。

様子が変でも、俺に対してある程度の信用はあるらしい。