いつも通り夕飯を作り終えて、妹達と一緒に食べた。

その後は自室に戻って、お菓子のレシピ本を眺めていた。

今度はカナメくんに何を作ろうか、そんなことを考えていると、昼間の出来事を思い出した。

あの女の子…。

彼女はナナミちゃん。

カナメくんと同様に幼なじみで、昔からよく3人で遊ぶ仲だ。

幼稚園から中学校までは同じ学校に通っていた。

高校からは、僕だけが違う学校に通っている。

ナナミちゃんはおっとりしたかわいい子。

本当に良い子だ。

でも、僕は彼女を好きにはなれない。

ナナミちゃん自体に悪い所があるわけではなくて、僕の気持ちの問題だ。

僕の気持ち…。

僕はカナメくんの事が好きだ。

別に男の人が好きなわけじゃない。

たまたま好きになった人が男の人ってだけ。

別れてしまったけど、数ヶ月前まで僕には彼女がいた。

これまでも数人と交際経験がある。

そして、別れてしまった彼女達に必ず言われる言葉は、『わたしのコト好きじゃないでしょ』だった。

申し訳ないけど、その通りだ。

僕にとって、カナメくんの存在が圧倒的で特別だから。

カナメくんとなら、付き合いたいって。

触れたいって思ってしまう。

こんなことを考えてるなんて、誰にも言えないけど。

そしてカナメくんは、ナナミちゃんが好きだ。

本人は隠しているつもりだけどバレバレだ。

ナナミちゃんのわがままには絶対に付き合うし、何より目が本気だ。

叶うなら、僕はナナミちゃんになりたい。

もし、なれたなら。

壁なんてないから、何も気にせずカナメくんの側にいることができる。

『うっ…。』

こんなことを考える自分が悲しい。

僕だけ別の高校を受験した理由は、2人と離れる為だった。

おかげで高校生になってからは、会う機会が減った。

そうすれば楽になれると思ったけど。

結局、会いたい気持ちには勝てず、お菓子やご飯を作っては彼の家に向かっている。

せっかく離れたのに、自分から近づいてしまっていた。

カナメくんを想うことも辛い。

ナナミちゃんに嫉妬することも辛い。

僕はこのまま苦しみ続けるのかな。