12月6日の放課後。

授業が終わって、今からはわたしの部屋でいっくんと2人きりの誕生日会が始まる。

付き合い始めてからは、頻繁にわたしの家にも来てくれるようになった。

わたしがいっくんの部屋に行くことも増えた。

付き合う前は…。

いっくんが部屋にくるなんて、ほとんどなかった。

あったとしても、めーちゃんも一緒だった。

今は来てくれるから嬉しい。

部屋に入ったわたし達はローテーブルの前に座った。

『それでは…。お誕生日おめでとう!まずはプレゼント!』

いっくんがそう言って、クラッカーを1本だけ発射した。

その後に、ラッピングされたプレゼントを渡してくれた。

わたしはすぐにプレゼントを開けた。

『ありがと~!あっ。ウサギのぬいぐるみだ~!しかも花束まで!嬉しいよ〜!』

『ウサギ好きだもんね!それにしても、花を買うのはちょっと恥ずかしかったよ…。』

『分かるよ~。ちょっと照れるよね~!』

『でも、ナナミちゃんも僕の誕生日の時にくれたから。頑張った!』

『ありがと〜!』

『それとね、誕生日ケーキ。僕が作ったんだ。フルーツケーキにしたよ!あとはね。クッキーもあるしチョコプリンもある!』

いっくんは保冷バッグの中から、何種類ものお菓子を取り出した。

作ってくれたお菓子を全てローテーブルの上に並べた。

机の上がいっぱいになっちゃった。

『作り過ぎだよ~。太っちゃったらいっくんのせいだからね!』

とっても嬉しい。

さっそく作ってくれたケーキを取り皿に分けた。

美味しい紅茶と一緒に食べた。

いっくんは、わたしの為に作った物だからいらないと言って、あまり食べなかった。

だからわたしがほとんど食べちゃった。

たくさんあったのにどれも美味しいから、食べ切ってしまった。

取り皿の意味がなかった。

いっくんが驚いている。

『すごいね。全部食べた!』

『どれもすご~く美味しかったから〜。それにね~。甘いものは別腹~!』

『なんだそれ!お腹いっぱいかどうかって、味とは関係ないよ!』

お互いの目を見て、笑い合った。

甘い時間が続く。

わたしって幸せだ…!

お腹がいっぱいになったので、2人で軽くおしゃべりをしながら休憩をしていた。

しばらくすると、いっくんがこんなことを言った。

『それとね。もうひとつナナミちゃんに言いたいことがあるんだ!』

『うん~!な~に~?』

わたしは答えた。

いっくんがにこにこしていて、かわいい。

言いたいことか。

急に改まってなにかな?

まだプレゼントとかあるのかなぁ?

『…僕達別れよう。恋愛ごっこは終わり。』

『…ごっこ?』

えっ…?

えっ…?

急に…何?

『もう一回だけ。言うね。別れよう。』

『…?』

はっきりとした声が聞こえた。

聞き間違いじゃない?

別れる?

『帰るね。』

いっくんは立ち上がった。

『え、え、え、ちょっ…。』

突然のこと過ぎて、頭が真っ白になった。

声が出ない。

無理やり絞り出した。

『な…なん…で。』

『元々、ナナミちゃんことが好きじゃない。嫌いでもないけど。僕の誕生日にプレゼントをくれたから、その分は返さないとなって思って。もう返したから、僕がここにいる理由はない。』 

誰?

本当にいっくんなの?

聞いたことのない、低くて冷たい声。

『あ…ああ…。』

『何?分からない。帰るね。』

『ま…ま…まっ…て。』

『…ん?』

『…ぜん…ぶ…う…嘘…だったの?…っほ…けほっ…けほ…。』

『そう。別れよう。じゃあね。』

いっくんは部屋から出て行った。

……。