『どうしたのナナミちゃん?元気ないね。』

放課後、僕達はカフェで食事をしていた。

いつもの放課後デートだ。

お店の端にある2人用の席に座っている。

喫煙席が近くにあるので、少しだけ煙草臭い。

『そう…?かな…。』

明らかに声が暗い。

大好きなはずのケーキはフォークを刺したまま、全然口にしていない。

これは何かあったとしか思えない。

カナメくん関連のことかな?

『ナナミちゃん。僕達は恋人同士だよ。悲しい事は共有して一緒に乗り越えようよ。』

僕は(狙い澄ました)笑顔で言った。

『いっくん…!』

ナナミちゃんの表情は、誰が見てもはっきりと分かるくらい晴れやかになった。

やっぱチョロいな。

『それでね…。』

ナナミちゃんは話を始めた。

僕は相槌すら打たず、無言で聞いていた。

なるほど。

今朝、ナナミちゃんはカナメくんの家に突撃したと…。

『めーちゃん、違う人みたいだった…。おかしくなっちゃったよ…。』

『…。』

『でね。変わったのはわたしの方だってボソっと言ってたんだよ〜。わたしは何も変わっていないのに…。』

ナナミちゃん…。

君はどこまでカナメくんを追い詰めるんだ?

とことん傷をつけるんだ?

無自覚なまま…!

自分の手が届かない場所にいる相手が。

触れることのできない相手が。

近づいてくる。

決して自分のものにはできないのに…!

残酷な仕打ちだ。

想像しただけで心が痛い。

この子はまだ、自分がどこにいるのか気づいていない。

カナメくんは今も苦しんでいる。

決めたよ。

ナナミちゃんは、僕以上にカナメくんを苦しめる。

カナメくんを解放しないなら…。

恋愛ごっこは終わりだね。