僕はナナミちゃんから、⚪︎⚪︎公園に来るように言われたので、公園にやって来た。

毎年のことだけど、今年もプレゼントをくれるみたいだ。

『ナナミちゃーん!』

『来てくれてありがとね~!あっちの方のベンチに座ろうよ〜。』

『うん。』

僕達は周りに人がいないベンチの方へ移動して、座った。

そしてプレゼントを受け取った。

『毎年のことだからね。気づいているとは思うけど〜。はい!』

『ありがとう!僕の好きなお菓子だ!それと腕時計も?オシャレだねぇ…って花束も?すごい。今年は盛り沢山だね!ありがとう!嬉しいよ!』

僕はお礼を言った。

恋敵ではあるけど、プレゼントは素直に嬉しいと思った。

一点だけ不思議に感じたことは、明らかにこれまでよりもプレゼントが豪華な点だ。

嬉しいけど、何かあったのかな。

『ほんとに?よかったよ~!…それでね。その…。』

『どうしたの?』

『あ…。あのね…。』

『うん。』

ナナミちゃんは体中をくねくねと動かして、口をもごもごとしている。

しばらく待っていると、ナナミちゃんは話し始めた。

『わたし!ずっとずっと…ずっと前から…前から…いっ…くんのこと!す。好きだったの!だから!付き合ってください!』

『…。』

突然の言葉に驚き、黙ってしまった。

僕は今、告白をされた。

なぜ?

『えーっと。ナナミちゃんが僕を好き?恋愛的な意味で…?』

『そ、そうなの!昔から…。ごめんね、ずっと黙ってて…。』

『…。』

全てが繋がった。

カナメくんが僕の誕生日の前日にプレゼントを渡した理由は、今日のためだった。

ナナミちゃんが、誕生日の当日に告白をするという計画を立てたからだ。

普段の様子を見る限り、ナナミちゃんは確実にカナメくんに相談をしている。

カナメくんが僕に彼女はいるかどうかを確認したのも、ナナミちゃんの為だったのか。

まてよ…。

カナメくんはもうずっと前から知っていた…?

ナナミちゃんが僕を好きってことを。

そうだとしたら…。

カナメくんも、僕がナナミちゃんに対して抱いていた感情を、ずっと抱えていたのかもしれない。

それでもカナメくんは、毎年僕にプレゼントをくれたし、一緒に遊んでくれた。

ナナミちゃんは良い子だけど鈍感だ。

カナメくんの気持ちに気づくはずがない。

無自覚なまま、カナメくんを傷つけている。

叶わない恋程、苦しいものはない。

無性に怒りが込み上げて来た。

好きな人を傷つけられた怒りなのか、限界に達した嫉妬のせいなのかは分からない。

ただの逆恨みかもしれない。

それでも許せない。

自覚が無い分、タチも悪い。

それなら僕は、この状況を利用させてもらう。

決してカナメくんの為なんかじゃない。

自分の為だ。

どうせ僕の恋は叶わない。

せめて…。

カナメくんから強い感情をぶつけて欲しい。

うつむいたまま黙ってしまった僕は、しばらくして口を開いた。

『まさか。ナナミちゃんに好かれてるなんて思ってなかったから、驚いたよ。…付き合おうよ。』

『へ?』

『ほ、ほんとに?』

『うん。本当だよ。』

『ほんとに?ほんとに?…やったぁ〜!』

『…今日から恋人としてよろしくね。』

『うん!えへへ~!やった〜!やったよ~!いっくんと恋人…!』

喜んでいるナナミちゃんを見て、嘘ではなく本当に僕のことが好きだということが分かった。

羨ましいな。

ナナミちゃんになりたいな。

カナメくんにあんなにも愛されているのに。

好きなだけカナメくんを傷つけることもできるのに。

なんで僕なんかを好きになるのか。