集合時間の2分前になったので、家を出た。

俺が住んでいる家は一軒家で、集合場所としてよく指定するのが、外にある郵便受けだ。

郵便受けの前でしばらくナナミを待っていると、ナナミではない人物から話しかけられた。

『カナメくんこんにちは!今からお出かけ?』

俺に話しかけた人物は、近所に住んでいるイクヤという男だ。

イクヤもナナミと同様に、13年の付き合いになる幼なじみだ。

『そうだぞ。イクヤはどっか行くのか?』

『うん。僕は夕飯の買い出しに!』

イクヤの両親は、共に仕事の関係で家を空けていることが多いらしい。

その影響でイクヤは昔から自炊をしている。

2人いる妹の分まで作っているから、家族内では料理担当のようだ。

そして料理に夢中になり、定期的に俺達にもご飯やお菓子を作ってくれる。

ちなみに味は最高に美味しい。

『また美味しいもん作ったら食べさせてよ。じゃあな。気をつけて。』

『うん。またね!』

イクヤのことを見送った後、ちょうど入れ違いで、ナナミがのんきな声を出しながらやって来た。

『ごめ~ん。お待たせ~。』

相変わらず、のんきな奴だと心から思った。

ナナミが集合時間通りにやって来たことは一度もない。

そんな集合の度に聞いている、お待たせの一言に和んでしまっている俺は、かなり重症だ。

『そんなに待ってないよ。イクヤに会ったからな。』

『えっ。いっくんに?いーなぁ…。わたしも会いたかっ…。あっ!いーなぁっていうか。ね!ほんとね!うん!』

ナナミの目が全方位に泳ぎ始めた。

こんなにも分かりやすいリアクションってあるか?

これで隠せていると、本気で思っているような奴だから恐ろしい。