目的地までは徒歩五分。大和に連れられてやってきたのは、女性から絶大な支持を得ている『ソルシエール』というアパレルブランドのお店。

店構えは〝服の魔法でお姫様にする〟というブランドコンセプトに違わぬ洋風の城のような外観で、店内も淡いピンク色の壁にキラキラとしたシャンデリアが吊られており、什器やソファなどのインテリアはオフホワイトで統一され、可愛らしく上品さも漂っている。

瑠衣にとっても憧れのブランドであるものの、普段使いのブラウスやワンピースでさえいいお値段がするので、自分へのご褒美として数着持っている程度だ。

「あの、どうしてここに?」

ソルシエールは女性向けのブランドで、メンズは小物すら扱っていない。大和には無縁の場所だ。

「前に会った時、ファッションは秋服がいちばん好きだって話してただろ? 七月も終わるし、そろそろ晩夏物や秋服が出る頃かと思って」

アパレル業界の季節は二ヶ月ほど先行していて、夏真っ盛りの七月には夏物のセールを行っている店が多い。

晩夏物とは秋服を売り出すには早い頃に売り出す商品で、夏素材ながら秋っぽい色味を使ったものを指す。

「高城さん、詳しいんですね」

弁護士なので博識であるとは思っていたものの、ファッション業界にも詳しいとは意外だった。