考えてみれば、交際期間0日で結婚を決めてしまったため、そういった今後の生活の意識のすり合わせみたいなものが、なにもできていない。

そして、一番重要なこと。子供をつくるタイミングについても、きちんと話し合えてはいなかった。

「あの、聞いてもいいですか?」
「ん?」
「私、仕事を続けても構わないですか?」
「もちろん。どうして?」

即答してくれた彼に安心しつつも、疑問に対しての答えを店内でするのは憚られ、視線を彷徨わせる。

すると言いたいことを察してくれた大和は、コーディネーターに支払いと配送の手続きを頼むと、店を出て車に戻ってから話を続けた。

「ごめん。買い物よりも、色んなことを話し合うのが先だったな。瑠衣をデートに誘う口実があるのが嬉しくて先走った」
「い、いえ。私も、どこかまだ結婚に対して現実味がなかったので。こうやって色々買い揃えていると、高城さんと一緒に住むんだなって実感が湧いてきたというか、色々想像できたというか」

大和の口からさらっと〝デート〟という単語が出たことに驚き、言わなくてもいいことまで言ってしまう。

「想像?」
「あ、いえ。なんでもないです」

ダイニングテーブルを見て、食後の皿洗いの風景まで思い描いていたなんて、恥ずかしくてとても言えない。

慌ててブンブン手を顔の前で振る瑠衣にクスッと笑った大和が、「気になるけど、それは追々聞こう」と話題を戻した。