一時間ほどで、ソファとダイニングテーブル、カーテンを選び終えた。

中でも瑠衣のお気に入りはダイニングテーブルのセットで、天板の大理石には光沢加工が施され、脚部にはレザーが張られている。椅子は温かみのある柔らかいオレンジ色を選ぶと、食卓がグッと明るくなりそうな予感がした。

きっと彼ならどんな料理を作っても美味しいと言って食べてくれそうだ。

(そのあとは一緒に食器を洗ったりするのかな。ふふ、本当に新婚さんって感じだ)

幸せな未来が見える気がして、瑠衣は口元を緩めた。

「いいな。このテーブルでふたりで食事をするのが楽しみだ」
「はい! 頑張ってお料理しますね」
「瑠衣も仕事をしてるんだ。無理はしなくていいよ」
「ありがとうございます。でもお料理は好きなので苦じゃないですよ。味は母仕込みなので、きっと高城さんのお口にも合うはずです」

言い切ってから、ふと疑問が浮かんだ。

弁護士はハードスケジュールで忙しい。父も帰りが遅くなったり、休日出勤になったりしていたし、よく海外出張にも行っていた。

そんな父を支える母は、結婚を機に仕事を辞め、専業主婦として家庭を守り続けている。

瑠衣は夢だったホテルのフロントという仕事が楽しくて、辞めるという選択肢は浮かびもしなかったけれど、もしかしたら大和は言わないだけで家庭に入ってほしいという希望があったりするのだろうか。