母である王妃陛下から手渡され、俺が他にどうすることも出来ずクラリスの左手首に付けたブレスレットを、彼女は一旦外して、ひとりで器用に右の手首に付け替えた。
それから両腕を上げたり下げたりして、また左に付け替え……
さっきの気まずさを抱えたまま、俺は尋ねた。


「それ、それは何の真似?」

夜会が開かれる大ホール。
今夜だけは、主役である第3王子の俺とパートナーが最後に入場する事になっていて。
今、会場では王族の最後に王妃陛下と登場した
国王陛下が開会の挨拶を述べていらっしゃった。

その挨拶が終わって、国王陛下から呼び込まれた俺達は改めて、居並ぶ招待客に紹介される。
そんな流れになっていて、今ここに居るのは俺とクラリスだけ。