俺のとても仲の良い女友達を装っているこの人物の内面は、ほぼ男だと知っているのは俺とレイだけだ。
俺は明後日の夜会で、このドレスを着た男と
ファーストダンスを踊ることになっていた。


当日の警備体勢をスローン侯爵はやはり気にしていて、グレゴリーとの打ち合わせを求めた。
マーシャル伯爵本人が王城の大臣執務室や
スローン侯爵家に出入りするのは目立つので、
代わりに息子のレイが侯爵家に通っていた。

クラリスが言うには、侯爵はグレゴリーよりも(俺よりも)
レイを認めているらしい。


「打てば響く、と誉めておりました」

クラリスの言葉がレイのプライドをくすぐって、満更でもないヤツは、もっと侯爵に認められたくて張り切りまくっている。
会うたび、話すたびにクラリスへの想いは募っているようで、中身がほぼ男でも気にしていない。
キツい彼女の手応えを堪能している。
他人のプライベートは勝手に話せないので、
クラリスに好きな男がいるとレイには言えていない。


周りの耳を意識して、今日もグダグダと食事をして、3人で中庭に移動することにした。
そこで夜会の段取りを確認しようと言うのだ。