この胸が痛むのは

アドリアナがミハンに遺したそれは、愛ではなく呪いだった。
呪われてミハンは誰も愛せなくなってしまった。
誰も愛せない自分に見せてほしいと、殿下に願ったのだ。

思わず、言ってしまった、信じてもいなかった
言葉を。


「殿下の運命の、真実の愛を私に見せてください」と。




バロウズからノイエが帰国するのは今日だ。
彼は実家に戻る前に、公爵家に報告に伺います、と手紙に書いていた。


アシュフォード王弟殿下の真実の愛の行方がどうなったのか、大変気にはなっていたが、公爵位を継ぐあれこれも大変で。

昔から『ストロノーヴァの両翼』と呼ばれていたオルツォ侯爵家の義兄のアンドレィ、イェニィ伯爵家の親友ルカスが仕事を終えてから邸に寄って膨大な引き継ぎ書類の仕分け等手伝ってくれていたので、睡眠時間は最低限確保が出来た。


正式に養子となったノイエの部屋も、公爵家には用意されたが、ノイエはまだトルラキアに戻ってくる気はないようだったし、ミハンも無理に帰国させるつもりもなかった。


お互いに連絡さえ途絶えさせる事がなければ、
相応しい時に正しい姿でノイエは戻ってくる。
ミハンにはそう思えたので、ノイエが納得する
まで待とうと決めていた。