この胸が痛むのは

アシュフォード殿下は、不思議なひとだった。
学生の頃は普通の、明るくて考えなしの、甘やかされた王子に見えた。

だが言葉を交わすと、意外に真面目に人の話を 聞く。
王子という肩書きに対しての自意識の高さに、
自分で苦しんでいた。

それで自分の経験を踏まえて、話をさせて貰えば、楽になったと御礼を言ってこられる。

このひとの力になりたいと思わせるひとだった。


だから、ルカスに指摘された様に。
らしくもなくアグネス嬢との事にも、口出しを
してしまったのだ。

殿下は一途に愛を口にするひとなのに、何故か
同類の彼等がよく口にする『運命』だの、
『真実の愛』だの……
そんな言葉でアグネス嬢の事を語らないひとだったから。


敢えて、結ばれない運命があると、告げた。
貴方達ふたりは捻れてしまって、元に戻るのは
難しい、と。
しかし、殿下は『足掻く』と、仰ったので。