雪に変わるかもしれないと心配されていた雨は、昼過ぎに止んだ。

レイノルドは昼食後から、新年大夜会の会場設営に立ち会っていた。
アシュフォード王弟殿下に付いて、流行の発信国のリヨンで3年過ごした事で、レイノルドは洗練された男だと思われていて、色々とアイデアを
求められた。


設営は彼の仕事ではないのに、外周りを確認してほしいと頼まれて、だからこそ雨が止んでからが忙しくなった。

リヨンではこんな感じだったと、言っただけなのに。
責任者のように言われて、納得出来なかったが。
それでも動いてしまうのがレイノルド・マーシャルという男だった。
彼は自分の働きがアシュフォードへの評価に繋がる事を知っている。


昨年中に、ホールに面したテラスに焚き火台を
幾つも設置して、それを囲むようにソファーを
並べることを指示していた。
ソファーの側の、グラスを置く為の小テーブルの上には、水を張り花を浮かべたガラスのボールを乗せていて、そこに大輪の花を形どった蝋燭を
浮かせる事も。
そしてテラス全体に等間隔に、火を灯すと良い香りがする蝋燭を入れたガラス製のランタンを置いた。


これまで、テラスは男女の密会場所の印象が強くて、暗い邪な場所だった。
間隔を広くとってふたりで座る長椅子が何脚か
置いてあり。
夜が深くなると、そこは取り合うように使用されもっと盛り上がると何部屋か用意された休憩室に移動する。
他に人が居ても、ここでならと、理性を飛ばして睦み合うのを許された場所。


それを明るく照らして、誰もが気軽に同性同士でも休憩に使えるテラスにしようと提案して実現した。