ノイエが卒業するまで、アシュフォード殿下とは何回かストロノーヴァ公爵家の晩餐会で顔を合わせた。
頭を下げて、初対面での自分の態度を詫びた。
王弟殿下があの時の冷気や残忍さを漂わす事は
もうなく、普通に話せるようになった。

それでもアグネスとの仲を疑われては困るので、自分から失恋の話をして、兄達の姿を見たくないからこの国を出るつもりだと話した。


「どこに行くのか決めているのか?」

「……それはまだ、です」

「何かしたいことでもあるのか?」

「……」

「……決まったら、話を聞かせて。
 後、決行する日まで金と金になりそうなものは溜め込んでおくように。
 金がないと、身動き取れないから」


公爵家の晩餐会では、母国でデビュタントした
アグネスも、殿下に伴われて参加する機会も増えていた。
その姿を見た母からは残念そうに言われた。


「アシュフォード殿下がお相手なら、どうしようもないわね」

アグネスには、まだ中等部だった頃に
『国を出るから、しがらみは少ない方がいいから』と、パートナーを申込む理由を話していたが卒業間近の今はその話をするつもりはなかった。

オルツォとストロノーヴァの両家から彼女が責められては申し訳ないからだ。
アグネスには別れを告げないと、固く決意している。