この胸が痛むのは

黙っていたノイエに、曾祖父が言った。


「イシュトヴァーンと名前を変えて、そのだらしなく伸ばした髪を切れ。
 わしはまだ、ミハンに子が出来ることを諦めてはおらん。
 だから、今すぐに養子どうこうするつもりは
ない。
 お前が待っていても、ミハンに子が出来れば、そちらを優先する。
 それでも、お前にその覚悟があるのなら、外人だろうと好きにパートナーにすればいい」


養子になる前に、先に改名させるのは、
ミハン叔父上に選択肢を与える為なのか?


ノイエにも、パートナーが外国人など駄目だと
言うだけでよかった。
叔父に子供が出来るまで養子になれと命じるだけでよかった。
だが、曾祖父は。
やはり、叔父上にも、ノイエにも甘かった。
甘く譲歩の形を取ってくれた曾祖父に……


マルークからイシュトヴァーンになる事。
肩まで伸ばしていた髪を切る事に同意した。

『貴方の髪は癖がなくて、とても綺麗なのね』

いつだったか、エリザベートが言ったから。
その日から髪を伸ばしていた。
男の癖に手入れもして。
その分、見た目で軟弱だと言われないように、
剣の腕も磨いた。
将来はオルツォ侯爵家が持つ子爵位を貰い、
エリザを娶り……だがもう。
その将来は失くなった。