「一度、会っていただけたら」

「会う必要はないな」

春に行われるデビュタントのパートナーに、
留学生アグネス・スローンを迎えたいと、ノイエは曾祖父に話したが。
返事は一言だけだった、彼女には会う必要はないと。

やはり純血主義の曾祖父に、外国人のパートナーは受け入れ難いか……
ノイエは唇を噛んだ。


「財務大臣の娘だったな?
 アグネス・スローンの事なら既に調べている」

言われて、そこで初めて気付く。
今ではない、恐らくバロウズで。
アグネス・スローンの事を調べていたのだろうと。

彼女はミハン叔父上の生徒だ、それもある程度
親しい。
20歳程の年齢差があるのに、まさかその可能性
を疑って調べたのか?


外国へ行っても、ストロノーヴァの目から離れられないことを改めて思い知る。
本家だからか、イシュトヴァーンの名前だからか、瞳が赤いからか……
ノイエは高等部を卒業したら、国を出たいと目論んでいたのだが、どこまで行っても行状を曾祖父に見られているのかも知れないと、改めてゾッとした。