「わかりました。
 その御方が了承したら、受けてくださるのね」

エリザベートが微笑んだ。
その微笑みを久しぶりに正面から見て、ノイエは複雑な思いだった。
俺こそ……こんな出演の条件を、エリザが受けるとは思っていなかった。


例の新入生はものすごい美少女だと、噂になっていた。
1年生の教室まで覗きに行った奴等が、騒いで
いた。

輝く金髪に、深い青の瞳。
首と手足が長く、他の少女より頭ひとつ出ているのに、大柄な印象を与えない物静かで儚げな異国の少女。

誰もが意識して気軽に近付けず、遠巻きに見ていた。
だから、名前も、どこのクラスかも、知っていたのに。



エリザベートの反応が見たくて。
その少女が相手役ならと、言ったのだ。
名前も知らないけれど、連れてきてくれたら、
前向きに考える。
演技の素人が何様のつもりだ。
誰かしら声をあげると思ったのに、言い分が通ってしまった……


去年の夏から頼まれていた。
エリザベートが部長を勤める中等部の演劇部の
次の公演。
『ヴァンパイアの花嫁』に、主役で出てほしいと。

ちゃんとした演技などしたことはない。
幼い頃にエリザベートと、ごっこで別人になり
きって遊んだだけだ。
母の侍女やメイド、大人を巻き込んで。