オルツォ侯爵家のオルツォ・マルーク・ノイエと彼の乳母の娘であるヴィーゼル・エリザベートは所謂幼馴染みである。
ということは、ノイエの兄の
オルツォ・シュテファン・マルコとも同様に
幼馴染みという訳で……

いいや、順番でいえば反対だ。
兄の幼馴染みだから、俺の幼馴染みなんだ。
エリザベートとの付き合いは、自分よりも兄の方が長い。

ただ、それだけの理由で彼女が兄を選んだのだとノイエは思いたかった。
そうすることでしか、自分を保てなかった。
つまらないプライドだった。



兄はオルツォ侯爵家の嫡男だった。
エリザベートはオルツォの家の寄子である男爵家の令嬢。
次男の自分ならともかく、兄は名門と言われる
この家を継ぐ身だ。

もしも、兄が妹の様に可愛がったエリザベートを生涯の伴侶に望んだとしても。
両親、特に母は絶対に許さないだろう。
最低限、後継ぎを産む侯爵夫人の実家は子爵位
辺りの爵位がないと。
ノイエはそう思って、兄に対して油断していたのだ。