「あれはね、反動なんだ」

トルラキアの、お母様のおばあ様が遺された邸宅に遊びにいらっしゃったノイエ様が私に説明してくださった。
私達家族は、トルラキアに避暑に来ている。


「ルルのお父上は昔、何も言えないひとでね。
 無理矢理に偽りの愛の言葉を3回言わされて、心の傷みたいになっていたんだ。
 それを君のお母上に意地悪されて、また3回
言わされてしょんぼりしていたので、僕が1回
で勘弁してとお願いしたらと、言ったら……」

「……」

「そしたら、反対にね。
 嘘の古くさい愛の言葉を3回言ったんだから、これからは最新の真実の愛の言葉を、その倍言うことにする、って。
 ルルのお父上は誓った」

「あれは倍以上ですね、父は母に対しては少しも羞恥心がないんです」

「……ルル、君と話していると本当は幾つなのか確認したくなるね?」


呆れたように私が言うと、ノイエ様は楽しそうに笑っていらした。
この黒髪赤い瞳の、完璧に近い美しい男性は
お母様の留学時代の先輩だったけれど、今は
どちらかと言えば、お父様の方と親しくされて
いる。

『だって君のお母様と仲良くすると、フラナガン公爵閣下に消されてしまうから』と、真面目な顔で仰る。