『君だけを愛している。
 ずっと君だけを愛している』


だから私は「いつか」と自分から着ていたドレスを、ウェディングドレスに作り替えたいと、言った。
殿下はとても喜んでくださって、それまで手を
繋いでいただけなのに、抱き締められて口付け
された。
あの夜、私はあんなに幸せだったのに。
どうして?
私はどうして、このドレスを染めてしまったの! 



『私がちょっと、そうしたら?って言ったから
だよ。
 紫色に染められたドレスを、あの男に見せて
やれば?ってちょっと言っただけなのにね?』


頭のなかの声が嗤いながら教えてくれました。
姿見の中の私が、私に嗤っていました。
呪いをかけたあの夜から、姿見で全身を映しても顔だけは見ないようにしていました。

クラリスに似た自分を見たくなかった。
でも、もうそこにクラリスは見えなくて、ただ私を嗤う私しか映っていなくて。


「見るな!見なくていい!」

殿下が私の腕を引っ張って、鏡の前から、鏡の中の私から姿を隠そうとするように左手で抱き締めて、右手を伸ばして。
右の肘で鏡を割られたのです。

鏡面にヒビが入っても、尚も殿下は肘で鏡を叩き付けて。
私を抱き締めた左腕は痛い程に力が込められていて。
まだ夏生地のシャツは裂けて、肘からは血が流れているのに。
鏡を粉々にするまで、殿下はそれを続けられたのでした。