『死人還りを始めた昔にそれを知られていたのかはわかりませんが……
 人は何故か、右回りよりも左回りに馴染むのです』

『ホワイトセージは空間浄化作用があると広く
知られていますが、気を付けなくてはいけない
のが、使用者のその時の精神状態です』

『使用者とはその場に居る全員です。
 依り童、術者、立ち会う者。
 その者達の気分が塞いでいる時、体調が悪い時、そんな時にはその香りが低級霊を呼び寄せるともいわれて……』



「レニーに何の草なのか確認したら、トルラキアから帰国された時に鉢植えで持ち帰られたようです。
 お嬢様の部屋のバルコニーで育てられていたそうです」

既にトルラキアやリヨンでは香草の効用は浸透していたが、まだバロウズでは草の扱いだった。
他国からの動植物の持ち込みは厳禁なのだが、 バロウズとトルラキア両国の国境警備の目を掻い潜って、うまく持ち込んだのか。

クラリスの部屋の扉をノックしようとしたその手を一瞬止めて、確認する。