この胸が痛むのは

学園高等部の校舎の空き教室で、俺とレイノルドは呼び出したクラリス・スローンに、今の俺の
状況を説明し、再来週の夜会のパートナーの件
をきりだした。


「ご説明ありがとうございました。
 つまり、私に殿下のパートナーになり、あの
お隣の有名な王女殿下の憎しみの的になれ、と
いう事ですわね?」

「その通り……引き受けて貰えるだろうか?」

王家からスローン侯爵を通じて命じることも、
正直考えた。
だが、それだと今回の夜会はやり過ごせても、
この先の事を考えると、アグネスの姉には納得
して協力して貰った方が後々良いような気がして。


この女に頭を下げるのは一度。 
我慢しろ、相手はアグネスの大切な姉だ。


「それで、私の報酬は?」

報酬と問われて、一瞬固まる。
切り返しが早いのはレイノルドの方で、やはりコイツに同席して貰って良かった。


「祖国の王子殿下からの頼みでも、報酬なんて言うんだ?」