これからアグネスと話をしてみると仰った先生に、帰国の前にストロノーヴァ公爵家へ伺いたいとお願いした。 
アグネスから俺には何も話さないだろうと、わかっていたからだ。
その後、イェニィ伯爵にも直接お会いして
『アグネスがお世話になるご挨拶をしに行こうと思っています』と、付け加えると。
先生の方から伯爵へ先触れを出してくださるとのことだった。


先生を見送るアグネスの様子は特に変わっては見えない。
先生からは、今はまだ俺が死人還りの事を知っていると、伝えない方がいいと言われていたので、白々しく何の話をしていたのか、彼女に尋ねたが。
アグネスの方も正直には言ってくれなかった。

何も言ってくれない彼女に。
つくづく信頼が回復していないのだと思い知らされて。
許さなくてもいいからと、わかっていた筈なのに寂しくて。
いつもより長く、彼女を抱き締めた。