最近、またアライアがうるさくなってきた。

前回は俺が19歳の頃、リヨンに行く前だ。
顔を合わせる度に『王子様なのに情けない』だの『だから囲い込めと言ったのに』だの、アグネスをトルラキアに留学させる前に何とかならなかったのかと、わーわー言われたのだった。
今から思えば、あれはレイの結婚が早まった事に対する八つ当たりもあった。



「スローン侯爵令嬢はご卒業されたのに」 

「……」

『6年経っても、全く状況が変わっていない』と、しみじみと文句を言う。
わーわー言ってた6年前とは、言い方を変えてきた。

全く同じではない、キスまで進んでいる。
言う必要がないから、言わないけれど。
元乳母なので我が子の様に俺の行く末の心配を
してくれているのはありがたいが、実母である
王太后陛下は彼女程悲観していない。


『貴方が独身である事で、外交では有利になる事もあるもの。
 結婚を急ぐ必要はないわ』

王太后陛下は何も考えていないような発言をするので、天然と思われているが、その実は……
国王陛下がこんなひとなのは、母とそっくりだなとふたりが会話しているのを側で聞いていると、よくわかる。
『王太后の間』では、不穏な会話をよく交わしているからだ。
 
アライアからの小言は続く。