私の18歳の夏が終わる頃。
後、3ヶ月でトルラキアでの学生生活が終わろうとしていました。
9月には母と姉の命日、姉の誕生日があって。
三度目の留学用旅券更新が必要な私と共に、祖母はバロウズへ一時帰国する筈でした。

11月下旬に貴族学院の卒業式があるのですが、
私は直ぐに帰国せずに、祖母と年越しをして、
冬を過ごして。
春に隣国シュルトザルツ帝国の大学を卒業した
兄がこちらに来て、それからふたりで帰国する
予定を立てていたのでした。 


そんな夏の終わりに祖母が亡くなりました。
あの、アシュフォード殿下と知り合った年の夏休み。
祖母から『どこかに連れていってあげる』と言われて。
殿下と姉との仲を疑った私は、別荘へのお誘いを断る為に、咄嗟に頭に浮かんだ国の名前をあげて……
ここはストロノーヴァ先生の母国。
ヴァンパイアと黒い森の妖しの国。



こんなに長い年月をここで過ごすとは、その時には夢にも思わなかった。
祖母は私に付き合ってくださっただけ。
きっかけはそれだけだったのに。

祖母はこの国の気候を、自然を、食べ物を、人々を愛して。
ここで静かに人生を終えたいと願った場所で、
一番愛した季節に亡くなったのです。
それは……トルラキアの夏が終わる頃。


 ◇◇◇


葬儀の後、私が卒業するまでについて話し合いの場が持たれました。