ちょっと毛色の変わった女性を好むレイからは、アグネスはごくごく平凡な女の子に見えるらしい。 
反対に俺が話したクラリス・スローンの暴挙を
面白がった。


「初等部から顔だけは知っていたけど、いいねぇ。
 手応えある」


何が手応えか。 
お互い好みが違っていて、そこは良かった。

夕食前にアライアがレイと部屋にやってくる。 
他を人払いして3人で話す。


「アグネス嬢はお薦めですわ」

「ええっ、あんなガキ……」

アライアが口の過ぎる息子の後頭部をはたいた。


「9歳でも、デビュタントまであっという間。
 彼女が社交界に出れば、きっと縁談は降るように来るでしょう。
 早めに囲い込みましょう」

「それなら……」

アライアの太鼓判があれば。


「ですが、夜会までは日がありませんし、現状のアグネス嬢では、侯爵令嬢と言えども若過ぎて、プライドの高い王女は引き下がりませんよ」

幼な過ぎてではなく、若過ぎてと言ってくれるところに、アライアの気遣いを感じる。