リーエが旦那様のトマシュさんのおばあ様を紹介してくれないので、私は焦れていました。

自分ひとりではもう、死人還りの儀式に必要な物も、正しい手順もわからなくて、この方なら知っているかもと、リーエが教えてくれたのに。

『早くご紹介して』と、頼んでも。
『今は都合が悪いらしいの』と、はぐらかされ。
『いつになったら、ご都合が良くなるの?』と、聞いて貰おうとしても。
『お年寄りの体調は、よくわからないのよね』と、それこそよくわからない返事を返されて逃げられるのです。


その上、高等部に進学してからは、全員何かの
クラブに所属するように規則で決められていて、週末のどちらかはクラブ活動に充てられるようになってしまって、以前よりリーエに会いに行く
時間も取れなくなって。



殿下からは
『君が呪いだと思い込んでいるのは違っていて、アンナリーエ夫人が教えたあれは恋のおまじないだった。
 だからその呪いで、母上も姉上も亡くなった
のではない』と、教えていただきましたが、私は
それをリーエには伝えませんでした。

まさか教えて貰った呪いが、実は恋のおまじないだったとは知りませんでしたが、当時の幼い私でさえ、呪いなどは存在しないとわかっていたのです。
だって、教えたリーエが直ぐに笑っていたのですから。


私が恐れたものは……
呪いそのものではなく、それを行ってしまった
自分の心なのです。