同行して貰う顔触れで、各々に偽名の旅券を渡し役柄を説明する。
出発前に出来るだけ早く帰国したい旨を話し、
往復の経路を話し合う。
雪が降った場合、海が荒れた場合、色々と想定
する。

どれ程急いでも年内帰国は無理なので、出発の
挨拶も兼ねて、侯爵に会いに行った。
最近は、ドレスの支払いの事よりも侯爵と話す
1時間を楽しんでいた。


「お忙しいと仰せになりながらも、外交は殿下に合っているようですね」

「今のところは楽しいですね」

「……ずっと殿下には厳しい事も言いました。
 ご自分の力で娘を守れるまでは、と」

「あの言葉が励みになりました。
 感謝しています」