この胸が痛むのは

「一つ一つにちゃんと理由があったんだ、良かったね。
 もうこれで、何の心配もなく婚約だね?」

「まだ婚約な……」

その時、急に左目が痛くなって。
私は目を押さえました。


「どうしたの? 目をどうにかしたの?」 

「……わ、わかりません……痛くて……睫毛だと」

我慢できない様な痛みではありませんが、不快なチクチクする痛みで涙が出てきました。


「ごめん、君の顔を覗き込めないから、鏡を貸して。
 映せる様に持っておくから、自分で目を見て取れる?」

「鏡を持っていない……ので」

オルツォ様がこの場で私の顔を至近距離で覗き込んで、睫毛を取る。
それを躊躇するのは当たり前の事です。
ですが私は鏡を持っていなかったし、それに……


「保健室に行こう!」

「しばらくしたら、取れるかと」


そう答えたのに、立って立ってと追いたてられるように保健室に向かわれました。


「君ぐらいの年齢の女の子はみんな、鏡を常時
持っていると思っていたよ」

左目を押さえた私の上腕を掴まれての移動なので、手を繋いでいたと噂にはならないでしょう。


「鏡を見るのは好きじゃないので」

好きじゃない、ではなく。
私の場合は見られない、なのです。